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はじめに:なぜ僕は、古着という「時間旅行」に魅せられたのか
皆さん、こんにちは。Kaitoです。
かつては世界中を飛び回るアパレルバイヤーとして、毎シーズン、何万着という服の海を泳いできました。
トレンドの最前線で、常に新しいものを追いかける日々。
それは刺激的で、充実した時間でした。
しかし、そんな僕が最終的にたどり着いたのは、一着一着に物語が宿る「古着」という宝島でした。
新品の服が持つ、誰もが同じスタートラインに立つような輝きとは対照的に、古着には、誰かの時間を経てきたからこその深みと、唯一無二の表情があります。
それはまるで、小さなタイムカプセルのよう。
この服は、どんな時代に、どんな場所で、どんな人に愛されてきたんだろう。
そんな想像を巡らせるたびに、僕は時間を旅するような、不思議な感覚に包まれるのです。
この記事は、単なる仕入れの教科書ではありません。
僕がどうしてこの魅力的な世界に足を踏み入れたのか、そして、これから「あなただけの宝物」を見つける旅に出ようとしているあなたに、僕が持っている「宝の地図」のすべてを分かち合うための招待状です。
この地図を手に、一緒にワクワクする冒険へ出発しましょう。
まずはここから。国内で「未来のヴィンテージ」と出会う方法
古着の仕入れと聞くと、いきなり海外へ買い付けに行くような、壮大な旅を想像するかもしれません。
でも、実は僕たちの足元、ごく身近な場所にこそ、未来のヴィンテージ、つまり「あなただけの宝物」は眠っているんです。
ここでは、僕が独立したての頃、まさに原点となった国内での仕入れ方法を、僕自身の経験談を交えながら具体的にお話しします。
灯台下暗し?身近な「宝の山」、リサイクルショップ攻略法
「リサイクルショップなんて、どうせ大したものないでしょう?」
そう思っていませんか?
だとしたら、それは大きな誤解です。
大手のリサイクルショップは、まさに宝の山。
膨大な商品の中から「輝く一着」を見つけ出すための視点、僕が必ずチェックするポイント、そして「これは買いだ!」と判断する基準を、こっそりお教えします。
僕が初めて自分の力で仕入れた、思い出の一着との出会いも、このリサイクルショップでした。
それは、少し色褪せたリーバイスのデニムジャケット。
タグの表記から80年代のものだと分かり、胸が熱くなったのを今でも覚えています。
決して高価なものではありませんでしたが、自分の目で見つけ、自分の知識で価値を判断し、自分の手で掴んだ、正真正銘の「宝物」でした。
この経験が、僕の古着屋としての第一歩を、力強く後押ししてくれたのです。
リサイクルショップを攻略するコツは、「自分なりのテーマ」を持つことです。
例えば、「90年代のアウトドアブランド」「ヨーロッパのワークウェア」「Y2Kファッションに通じる2000年代初頭のポップなアイテム」といったように。
テーマを絞ることで、膨大な商品の中からでも、アンテナに引っかかるものが格段に増えます。
闇雲に探すのではなく、狙いを定めることで、宝探しの精度は格段に上がるのです。
そして、必ずチェックしてほしいのが、服の「内側」です。
品質表示タグやブランドタグには、製造国や年代、素材といった情報が詰まっています。
例えば、「Made in USA」の表記があるだけで、価値が大きく変わるアイテムは少なくありません。
また、タグのデザインそのものから年代を特定することもできます。
これは、知識と経験がものを言う、プロの領域。
最初は分からなくても、スマートフォンで調べながらで構いません。
その積み重ねが、あなたの「眼」を養ってくれるのです。
僕がチェックする具体的なポイントは以下の通りです。
縫製: 脇下や袖の付け根など、力のかかる部分の縫製が丁寧か。
古い年代のものほど、頑丈で丁寧な作りをしています。
素材感: 天然素材(コットン、ウール、シルクなど)の風合いはどうか。
近年のものにはない、独特の質感を持つものがあります。
ジッパーやボタン: TALON社やSCOVILL社といった、ヴィンテージ好きにはおなじみのメーカーのジッパーが使われていないか。
ボタンのデザインや素材も、年代を特定する重要な手がかりです。
これらの点を意識するだけで、リサイクルショップはあなたにとって、最高の学びの場であり、宝の山に変わるはずです。
スマホ一つで世界と繋がる。オンライン仕入れの光と影
今や、スマホ一つで日本中、いや世界中の古着にアクセスできる時代です。
メルカリやヤフオクといったフリマアプリは、忙しいあなたの強力な味方になるでしょう。
僕も、店舗の営業が終わった深夜、ベッドの中で新しい出品をチェックするのが日課になっています。
オンライン仕入れの最大の魅力は、その効率性と網羅性です。
地方の小さな古着屋さんが、とんでもないお宝を出品していることも珍しくありません。
実店舗を回る時間がない方でも、自分のペースで、世界中のマーケットを覗くことができるのです。
しかし、便利な反面、そこには「実物を見られない」という大きな影も潜んでいます。
写真と説明文だけを頼りに、価値を判断しなければならない。
これは、初心者にとっては非常にハードルの高い作業かもしれません。
写真だけで商品の状態を見極めるプロの技は、「光と角度」を読むこと。
不自然に明るすぎたり、逆に暗すぎたりする写真は要注意です。
色味を加工している可能性や、ダメージを隠している可能性があります。
また、ダメージや汚れを意図的に隠している可能性も考え、複数の角度から撮影された写真が掲載されているかを確認しましょう。
特に、脇下の汗ジミ、袖口や襟元の擦り切れ、パンツの股部分などは、ダメージが出やすいポイント。
これらの部分の写真が掲載されていない場合は、質問機能を使って写真の追加をお願いしてみるのも一つの手です。
そして、「これは危ない!」という出品者の見分け方は、商品説明の「解像度」です。
サイズや素材、状態について、どれだけ丁寧に記載されているか。
誠実な出品者ほど、商品の情報を正確に伝えようと努力するものです。
「古着ですので、ご理解のある方のみご購入ください」の一言で片付けているような出品者からは、購入を避けた方が賢明かもしれません。
逆に、採寸がミリ単位で記載されていたり、ダメージ箇所が写真付きで詳細に説明されていたりする場合は、信頼できる出品者である可能性が高いと言えるでしょう。
僕自身、オンライン仕入れで何度も失敗を重ねてきました。
写真では綺麗に見えたシャツが、届いてみたら襟元が黄ばんでいたり、サイズ表記を見誤って全く売れないサイズのパンツを大量に仕入れてしまったり。
でも、そうした失敗も、今では大切な学びです。
失敗を恐れず、まずは少額から始めてみてください。
週末は冒険へ。フリーマーケットで「一点物」を掘り当てる楽しみ
効率だけを求めるなら、フリーマーケットは最適とは言えないかもしれません。
でも、そこには予測不可能な出会いと、売り手との温かいコミュニケーションという、古着ビジネスの原点ともいえる喜びがあります。
僕がフリーマーケットで狙うのは、「おじいちゃん、おばあちゃんが出店しているブース」です。
彼らのクローゼットには、長年大切にされてきた、質の良いヴィンテージ品が眠っている可能性が高いからです。
2025年のトレンドである「グランパコア」のような、レトロで温かみのあるアイテムが見つかるかもしれません。
先日も、あるおばあちゃんが出店していたブースで、60年代のスコットランド製モヘアセーターを見つけました。
聞けば、若い頃に新婚旅行で買った思い出の品だとか。
そんなストーリーを聞くと、そのセーターがより一層、愛おしく思えてきます。
価格交渉もフリーマーケットの醍醐味ですが、大切なのは相手へのリスペクトです。
いきなり「安くしてください」と言うのではなく、まずはその品物を褒めること。
「この柄、素敵ですね」「すごく状態が良いですね」といった言葉から入るのがポイントです。
その上で、その品物に込められた想いを聞き、共感を示した上で、「大切に引き継ぎたい」という気持ちを伝える。
そうすれば、きっとお互いが笑顔になれる、気持ちの良い取引ができるはずです。
「このセーター、次の世代にも着てもらえるなら嬉しいわ」と、おばあちゃんは少し寂しそうに、でも嬉しそうに笑って、少しだけ値段を下げてくれました。
こうした経験こそ、古着ビジネスの何よりの報酬だと僕は思います。
また、フリーマーケットでは、開催時間の「最初」と「最後」が狙い目です。
最初は、まだ誰も手をつけていない商品が並んでいます。
最後は、出店者が「持って帰るのが面倒だから」と、大幅に値下げしてくれることも。
時間帯によって戦略を変えることで、より効率的に仕入れができるのです。
プロの世界へようこそ。古着卸という「秘密の扉」の開き方
国内での仕入れに慣れてきたら、いよいよ次のステージです。
より多くの、そしてより個性的な古着と出会うための「秘密の扉」、それが古着卸の世界です。
ここは、まさにプロの領域。
最初は少し緊張するかもしれませんが、大丈夫。
僕があなたの手を取り、その扉の開き方から、中の歩き方まで、丁寧にエスコートします。
「ピック」「ベール」「アソート」って何?卸仕入れの3つの流儀
卸の世界には、独特の専門用語があります。
中でも「ピック」「ベール」「アソート」は、絶対に知っておくべき3つの仕入れスタイルです。
ピック
倉庫に山積みされた古着の中から、1点1点自分の目で見て選ぶスタイルです。
宝探し感覚で、自分の店のコンセプトに合ったものだけを厳選できるのが最大のメリット。
失敗が少なく、初心者でも安心して始められます。
ただし、手間と時間がかかり、1点あたりの単価は高めになります。
週末に開催されるピック専門のイベントなどもあるので、まずはそういった場所から挑戦してみるのが良いでしょう。
僕が初めてピックに挑戦したときは、まるで宝の山に埋もれたような感覚でした。
どれもこれも魅力的に見えて、気づけば予算オーバー。
でも、その一つ一つが、後に自分の店の看板商品になったのです。
ベール
数十キロ単位で圧縮梱包された古着の塊を、中身を見ずに購入するスタイル。
最大の魅力は、1点あたりの単価が圧倒的に安いこと。
Tシャツなら1枚数十円、なんてことも。
運が良ければ、ヴィンテージのお宝が眠っていることもあります。
しかし、中には全く売れないような商品も混ざっており、まさにハイリスク・ハイリターンな仕入れ方法です。
僕も最初の頃、意気揚々とミリタリー系のベールを開封したら、中身のほとんどがサイズ違いの同じパンツで、頭を抱えたことがあります(笑)。
ベールに挑戦するなら、ある程度、売れ残りを覚悟する資金的な体力と、それを別の形で活用する(例えば、リメイク素材として販売するなど)アイデアが必要です。
アソート
「リーバイスのデニムパンツ、30本」というように、ある程度カテゴリで分けられた商品のセットを購入するスタイル。
ピックとベールの中間のような位置付けで、ネットで購入できる手軽さも魅力です。
特定のジャンルを強化したい場合に非常に有効です。
ただし、自分の目で選べないため、状態の悪いものが混ざっている可能性はあります。
アソートを購入する際は、その業者の評判を事前にしっかりとリサーチすることが重要です。
あなたのビジネスの規模や目指す方向性によって、最適な方法は異なります。
まずは小ロットから試せるピックやアソートから始めてみるのが良いでしょう。
初めての卸倉庫。僕が「宝の地図」を手に入れるまで
今でも忘れません。
初めて足を踏み入れた卸倉庫の、あの圧倒的な物量と独特の匂い。
古着特有の、少し埃っぽいような、でもどこか懐かしい匂い。
天井まで届きそうな古着の山を前に、右も左も分からず、ただ呆然と立ち尽くした僕が、どうやって自分だけの「宝の地図」を作り上げていったのか。
最初のうちは、とにかく「歩くこと」です。
倉庫の隅から隅まで歩き、どんなジャンルの古着が、どのあたりに置かれているのか、全体像を把握する。
まるで、巨大な図書館の司書になったような気分で、自分だけのマップを頭の中に作り上げていくのです。
「あそこには、70年代のロックTシャツが集まっているな」「こっちのエリアは、レディースのワンピースが豊富だ」といったように。
この作業を繰り返すことで、次に何をすべきか、どこを重点的に探すべきかが見えてきます。
そして、倉庫の担当者と積極的にコミュニケーションを取ること。
「こんなアイテムを探しているんですけど…」と一声かければ、「ああ、それなら昨日、あっちのラックに入ったよ」と有益な情報をくれることも少なくありません。
彼らは、その道のプロ。
毎日、何トンという古着を見ている彼らの知識と経験は、何よりの道しるべになります。
良い関係を築くことで、一般には公開されない特別な商品を回してもらえたり、次の入荷情報をこっそり教えてもらえたり、あなたのビジネスの強力な味方になってくれます。
コーヒーの差し入れ一つで、ぐっと距離が縮まることもありますよ。
僕が倉庫で学んだもう一つの大切なことは、「直感を信じる」ことです。
膨大な商品を前にすると、つい頭で考えすぎてしまいます。
でも、本当に良いものは、パッと見た瞬間に「これだ!」と心が反応するものです。
その直感を大切にしてください。
失敗しない!信頼できる卸業者を見極める3つの眼
残念ながら、卸業者の中には、質の悪い商品を平気で混ぜてくるところも存在します。
大切な資金を無駄にしないためにも、「信頼できるパートナー」を見極める「眼」を養うことは非常に重要です。
僕が業者選びで必ずチェックする3つのポイントは、以下の通りです。
1. 商品のクオリティと価格のバランス
当たり前のことですが、これが最も重要です。
いくつかの業者を回り、同じようなアイテムの価格と状態を比較検討しましょう。
「安かろう悪かろう」では意味がありません。
価格が安い理由(例えば、未洗濯である、ダメージ品が多いなど)を明確に説明してくれる業者を選びましょう。
2. 倉庫の整理整頓
商品がジャンルやアイテムごとにきちんと整理されているか。
倉庫の状態は、その業者の仕事の丁寧さを表します。
乱雑に商品が積み上げられているような倉庫は、商品の管理もずさんである可能性が高いです。
逆に、アイテムごと、年代ごとに綺麗に分けられている倉庫は、商品への愛情とリスペクトが感じられ、信頼できます。
3. 担当者の対応
あなたの質問に誠実に答えてくれるか。
長期的なパートナーとして、気持ちよく取引できる相手かどうかを見極めましょう。
こちらの要望を親身に聞いてくれるか、古着に関する知識は豊富か、そして何より、古着が好きで、その仕事に誇りを持っているか。
そういった人間性の部分が、最終的には最も重要な判断基準になると僕は考えています。
僕が長年お世話になっている業者さんは、いつも「この服、良いでしょう?」と目を輝かせながら商品を紹介してくれます。
そんな姿を見ると、こちらまで嬉しくなってしまいます。
ビジネスは、人と人との繋がりです。
信頼できるパートナーと出会えることが、成功への一番の近道だと思います。
旅の終わり、そして新たな始まりへ
ここまで、僕と一緒に長い旅をしてきてくれて、本当にありがとうございます。
リサイクルショップの片隅から、巨大な卸倉庫まで、様々な「宝の山」を巡ってきましたね。
しかし、忘れないでください。
仕入れは、あくまでスタートラインです。
本当の冒険は、あなたが仕入れたその一着を、次の誰かへと繋いでいく、その瞬間に始まります。
その服が持つストーリーを伝え、新たな価値を与え、そして、次の持ち主の元へと送り出す。
それは、サステナブルな未来への貢献にも繋がっています。
Z世代を中心に、環境への意識が高まる今、古着という選択は、かつてないほど大きな意味を持っているのです。
ファストファッションが使い捨てられる一方で、古着は時代を超えて受け継がれていく。
その循環の一部を担えることは、この仕事の大きな誇りです。
古着市場は、2026年までに8兆円を超え、2030年にはファストファッションの2倍以上の規模になると予測されています。
これは、多くの人が古着の価値に気づき始めている証拠です。
この記事が、あなたの新たな一歩を、力強く後押しできたなら、これほど嬉しいことはありません。
最初は誰でも初心者です。
失敗を恐れず、まずは一着、あなただけの「宝物」を見つけることから始めてみてください。
その小さな成功体験が、やがて大きな自信へと繋がっていくはずです。
皆さんは、どんな古着に心惹かれますか?
その答えが、あなたのビジネスの方向性を示してくれるはずです。
自分の「好き」を信じて、一歩を踏み出してください。
さあ、あなただけの物語を、紡ぎ始めてください。
応援しています。



