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塗布工程の内製化、外注に出す前に考えておきたい判断基準

生産技術の三宅です。
いまは電子部品メーカーで塗布と接着まわりの設備を見ています。

前職の自動車部品メーカーでは、ECUの封止工程を12年ほど担当していました。

若手からよく相談されるのが、これです。

「今は手で塗ってるんですけど、外に出すか装置を入れるか、どっちがいいですかね」

答えは工程によって変わります。
ただ、考える順番のほうはだいたい決まっている。
今日はその話です。

「塗布だけ外注」は、思っているほど選べない

組立ラインの中の塗布工程だけを切り出して外に出す、というのは案外難しいです。

受託先を探すと、出てくるのはポッティングや基板コーティングの請負です。
つまり工程まるごとの委託です。
「塗って返してもらう」のではなく、「その前後ごと預ける」形ですね。

そうなると輸送とリードタイムが乗ります。
不具合が出たときの切り分けも、社内で完結していたときより面倒です。

外注が向くのは、こんなときです。

  • 年間の生産数がまだ読めない
  • 特殊な樹脂を使っていて、社内に扱える人がいない
  • 真空脱泡や恒温槽まで必要で、設備一式を抱えるのが重い
  • 立ち上げの時間を金で買いたい

逆に、量が読めていて前後工程も自社にあるなら、外に出す理由はかなり薄くなります。

内製に振るかどうかは「量×年数」で決まる

外注費は変動費、装置は固定費です。
だから作る量と続ける年数が増えるほど、内製が有利に転びます。

ここを感覚でやると、稟議で必ず止まります。
「で、何年で回収できるの」と聞かれて答えられないからです。

計算の型として使いやすいのが、中小企業省力化投資補助金の公募要領に載っている式でした。

投資回収期間=投資額 ÷(削減工数 × 年間稼働日数 × 人件費単価 + 増加した付加価値額)

単純ですが、埋めようとすると自分の工程を数字で見ざるを得なくなります。
1個あたり何秒縮まるのか。年間何日動かすのか。不良で捨てている材料はいくらか。
実測していないと、分子も分母も置けません。

補助金を使う前提でなくても、一度この式で計算しておくと社内の話が早い。制度の中身は中小企業省力化投資補助金の公式サイトで確認できます。

ちなみに、国内の現場が自動化に前のめりかというと、数字はそうでもありません。

日本ロボット工業会の年間統計によると、2025年(暦年)の産業用ロボットの受注額は1兆456億円で前年比25.7%増でした。
ただ、国内出荷は37,816台で18.3%の減少です。
3年続けて減っています。伸びているのは輸出のほう(32.4%増)でした。

用途別だともっとはっきりします。
接着剤の塗布にあたる「シーリング・グルーイング」の国内出荷は、2025年で182台。前年の238台から減っています。

つまり同業の多くは、まだ手作業か既存設備の延命で回しています。
焦る必要はないですが、入れた会社との差はここで開きます。

装置を選ぶ前に、吐出方式だけは確かめておく

内製に振ると決めたら、次は機種選定です。

ここで値段とカタログの吐出量だけ見て決めると、たいてい後悔します。
私は一度やりました。

見るべきは吐出方式です。
空気圧で押し出すエアシリンジ方式は安くて手軽ですが、液温が変われば粘度が変わり、吐出量も動きます。
朝と夕方で塗布量が違う、という現場のあるあるは、だいたいこれが原因です。

一方、ピストンが押しのけた体積で計量する容積計量方式は、粘度が変わっても量が動きにくい。
初期費用は上がりますが、毎朝の調整から解放されます。

方式ごとの違いはディスペンサーという装置の基本を整理した解説ページにまとまっているので、選定を始める前に目を通しておくと話が早いです。

もう一つ、液剤側の情報を装置メーカーだけに聞かないこと。
接着剤そのものの規格や試験方法は日本接着剤工業会が整理していますし、硬化条件や適合材質は液剤メーカーが一番詳しいです。

まとめ

順番だけ、もう一度。

  • そもそも塗布だけを切り出して外注できる工程か確かめる
  • 年間の量と、その製品を何年作るかを出す
  • 投資回収期間の式に自分の数字を入れてみる
  • 内製に決めたら、値段より先に吐出方式を見る

私自身は、量が読めているなら内製に寄せたほうがいいと思っています。
塗布は不良の原因になりやすく、原因を追える場所が社内にあるかどうかで、あとの苦労がまるで違うからです。

まずは自分の工程の数字を並べるところから始めてみてください。